お星様になったDONCHI
パトラッシュとマックス【1】
  パトラッシュとマックス【2】
MAXを迎えた日

パトラッシュとマックス(1)



親分のはちべえさんは、本当に犬が大好きでした。 でも、犬の事まったく理解していなかったのです。大好きで大好きで可愛くて可愛くて、ついついペットショップからグレート・ピレニーズという大人になるととても大きくなる犬の男の子の赤ちゃんを連れて帰りました。

彼は、マンションに住んでいました。親分ですから、普通のマンションよりは大きなマンションでしたが、やはりしつけをきちんとしないとなかなかうまくは育ちません。

ピレニーは、白くてふわふわして、まだまだ小さくてとっても可愛い子犬でした。 パトラッシュと いう名前をつけてもらいました。おしっこの仕方も覚えていない、何もかもこれから教えてもらう子犬でした。

でも、親分のはちべえさんは、可愛くて可愛くて、大好きで大好きでとてもしつけどころではありませんでした。おしっこをどこにされても、ニコニコ笑ってなーんにも言わずにいたのです。

ある日親分のはちべえさん一家は、大きなおうちを買って引っ越しました。お庭も大変広いので、 パトラッシュはとても幸せになるはずでした。ところが、おしっこの仕方も教わっていないので、新しいおうちで室内飼いすることはおかあさんに反対されてしまいました。それはそうです。お掃除をしているおかあさんにしたらたまったもんじゃありません。大きなお庭の一角に犬用スペースを作ってもらい、立派な犬小屋も買ってもらってパトラッシュはそこで暮らすことになりました。犬のことあまり知らなかったはちべえさんは、パトラッシュも広いところに引っ越して幸せになると信じて疑わなかったのです。

パトラッシュにとっては、災難です。彼には何もわかりません。当然ですが、人間の勝手な事情は、彼にはまったくわかりません。いきなり違う場所に連れて行かれ、まして突然外に出されたのですから、 当然ほえまくります。体もどんどんでかくなっているので声も大きいし太いです。とにかくものすごい声で、ほえ続けます。

親分のはちべえさんは、犬のことを大好きでしたが、犬のことをあまり知りません。本当はパトラッシュが何故ほえているのかもわかりません。寂しいのかなと思ったはちべえさんは、 よりによって今度は、グレート・デーンの男の子の赤ちゃんを買ってしまいました。とにかくはちべえさんは、犬が大好きで、可愛くて可愛くて仕方がないのです。身勝手な愛情ですが、割と良くいるまだ大人になりきれていない男性のひとりだったのでしょう。人間の子供を育てる母親のように、我慢をしなくてはならないことがたくさん増えることだとか、犬の習性だとか、超大型犬はどういう風に育てなくてはならないかとか、あまりきちんと考えていなかったのです。気分が良いときだけかわいがったり、可愛くてつい連れて帰ってしまったり、まるで子供と同じでした。悪気がまったくないのですから、修正もできるわけがありません。珍しい車に憧れる少年の様な気持ちで、珍しい犬を見たら欲しくて欲しくてたまらなくなってしまったのかもしれません。

その頃パトラッシュは、1歳になっていました。もう立派な成犬のグレート・ピレニーズです。ましてきちんとしつけをしないと危険な犬種です。親分のはちべぇさんは忙しいので、日曜日以外は子分のゴリさんが犬の世話をしていました。甘やかされて育っているので、ゴリさんの言うことなど聞くはずがありません。それはそれは大変でした。ものすごい力で引っ張ります。このころからゴリさんは、パトラッシュのことで、親分から怒られることが多くなり、ストレスがたまります。そのはけ口は当然、パトラッシュでした。誰も見ていないところで、蹴ったりリードで殴ったりしていました。

グレート・デーンの赤ちゃんは、まだ4ヶ月ほど前に産まれたばかりでした。幸せになるために、お母さんのお腹で立派に大きくなって、元気に生まれてきた赤ちゃんの中の一匹でした。優しい目をしたとても可愛い赤ちゃんでした。 ただ、その子には片方の玉がなかったのです。その子は、MAXと名付けられました。何故MAXが選ばれたのでしょう。運命だったのでしょうか。玉がなかったせいで、引き取り手がなかったのかもしれません。何も知らない寂しがりやで甘えん坊のMAXは、お母さんと引き離され、飛行機で青森から東京に来ました。どんなに不安だったことでしょう。

はちべぇさんの子分のゴリさんが、段ボール箱を持って車で空港に迎えに行きました。ブリーダーの人は引き渡すときに、その段ボールを見てびっくりしたそうです。先行きを案じながらも、玉が片方ないので、心を鬼にして引き渡したのでしょう。それでも、幸せを願わないわけがありません。

パトラッシュは、甘やかされて育っているので、殴られても蹴られても、言うことなど聞きませんが、MAXは散歩の途中でウンチをしたことを怒られ蹴られたら、二度と散歩の時にウンチをしなくなったそうです。そのくらい、人を信じて人が大好きな犬でした。何をされてももうどこにもやられたくないと思って我慢していたのかもしれません。ゴリさんの手の下に潜り込んで撫でて欲しいとおねだりするような犬でした。その性格が幸いして、ゴリさんはMAXの方を少しはかわいがっていたようです。
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