お星様になったDONCHI
パトラッシュとマックス【1】
  パトラッシュとマックス【2】
MAXを迎えた日
MAXを迎えた日

MAXを迎えに行く日、おかあさんとゴリさんははトリマーさんに予約を入れ、半日かけてシャンプー、消毒、カットなどをして、精一杯MAXをきれいにしてくれました。フィラリアの予防薬でおやつ型のものも、その年に飲ませる分を用意して下さいました。

MAXがかわいがられるようにとの気持ちがあることを知り、少しだけホッとしたものです。

親分のおうちは幾分高いところにあり、パトラッシュがいるところから私の車を止めてあるところが下に良く見えます。MAX一人が連れ出されたときから、パトラッシュはずっと吠えていました。最初はきっとMAXひとりだけ、散歩に連れ出すなんてずるいと思ったのかもしれません。

私は広いお庭にいる時にはそんなに感じなかったMAXの大きさを車に乗せる時に改めて気づかされました。国産のワゴン車なのですが、その横にMAXが立ったとき、大きな不安を感じるほどその犬は超大型犬でした。受け入れると決めたことを後悔するほどの大きさでした。いっぺんに頭の中に色々な不安がよぎりました。じーちゃんばーちゃんは何て言うだろう。びっくりするだろうなぁ。この車に乗れるんだろうか。近所の人は何て言うだろう。奈良の鹿、いやトナカイみたいだ。犬ぢゃない(汗)。

それでも、もう後には引けません。深呼吸をするように、改めて覚悟を決めました。成せば成る(笑)、DONCHIが助けてくれると信じて。

ゴリさんのかけ声で、マックスが車に乗り込みます。ゴリさんは荷台に積むモノだと思っていたようで、私が後部座席にと言うと、少し驚いていたようでしたので、当然のように「家ではここよ」と言いました。言い忘れましたが、私はゴリさんに「犬の十戒」を印刷して渡しました。私の中ではすべての人のすべての事情が理解できないわけではありませんでしたし、親分のはちべぇさんも普段とても良い人でした。ただ、ちょっと犬側の気持ちになるとこういうことがたくさんあるということを、人間がどんなに勝手な生き物であるかということを知ってもらいたかったのだと思います。

3時間の長旅です。MAXは後部座席に慣れていないので最初あっち向いたりこっち向いたり落ち着かない様子でしたが、、助手席に乗っていた息子が信号待ちの間に後ろに移り、MAXに伏せをさせたりしてなんとか落ち着かせることができました。

車が見えなくなるまで、吠え続けていたのでしょう。しばらく、パトラッシュの声が聞こえていました。この時、MAXの表情を見る余裕がなかったのと、まだ私には可哀想なワンコを救い出すという人間側の勝手な思いしかなかったので、MAXが辛いなんて事はこれっぽっちも想像出来ずにいました。

後で気づいたのですが、この長旅も、MAXが息子を認めるきっかけになったようでした。

やっとの事で家に着くと、MAXは外で飼われていたのにもかかわらず玄関をすんなり入り、最初にリビングのDONCHIのお骨に挨拶をしました。これはとても不思議でしたが、今思えば亡くなったばかりのDONCHIのお骨のにおいに反応しただけなのかもしれません。私はDONCHIがMAXを連れてきてくれたと思いたいので、本当にホッとしたものです。

その後、おじーちゃんとおばーちゃんに挨拶をして、後は部屋の探索をはじめました。思っていたより、すんなり家に入り、のんびりした様子でしたので、まずは一安心でしたが、今の優しい瞳とはまったく違う冷たい目をしていたのをはっきり覚えています。 MAXは口元が黒いので怖く感じますが、よく見るとその瞳は豊かで、指は細く長くまるで人間の様でした。一通り探索を終え座ったMAXの体を私は、怖いモノ知らずでいきなり、すべて確かめました。耳の中、肘のたこ、真っ赤な目、肉球、そして、このいきなりの行為は、偶然にもMAXのプライドを傷つけ、私を認めるきっかけになったとようでした。

娘やおじーちゃん、おばーちゃんには当初、威嚇のポーズをしてみせましたが、私には一切そういう態度は見せませんでした。偶然怖いモノ知らずでズケズケ踏み込んだ行為が、私とMAXの関係を良いモノにしたように思えます。改めて、犬と人間の甘く切ない関係を考えさせられます。決して人間扱いなどしてはいけない犬の習性。本当は対等でいたいのに、ボスでいなければならないせつなさ。超大型犬を飼うという難しさを感じました。

パトラッシュは、MAXがいなくなってから、私の車が去っていった方をじーっと見てボーっとしている日が続いたそうです。寂しそうな声で遠吠えをしたりもしたそうです。やはり、パトラッシュとMAXは、人間の勝手で引き離されてしまったけど、仲間だったんだ!ということは、MAXも寂しいに違いない。その事に初めて気づきました。

パトラッシュもひとつきほどすると落ち着きを取り戻し、殴ったり蹴ったりするゴリさんもいないので、今までのやんちゃぶりがうそのように本当に落ち着いた良い子になったそうです。すべて、人間の勝手のせいだったのかもしれません。うそのようにおかあさんに甘え、幸せに暮らしています。

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